2020.01.07 「短期記憶」の入り口は「注意」=「短期記憶障害」の入り口は「注意障害」
タグ:注意障害, 神経心理カウンセリング, 記憶障害, 認知機能, 高次脳機能障害
脳血管障害で高次脳機能障害の後遺症がある場合、何が障害を受けず、何が障害を受けてできなくなっているのかを見極めて、残っている機能を上手に活用してできなくなった部分を補っていくことが大切です。
今日、訪問したクライエントの方は、右半球の脳溢血の後遺症で、左半身まひとともに、軽い認知機能の障害がある方です。
神経心理検査や日常生活の観察の結果、短期記憶障害があると診断されています。
短期記憶障害は映画「メメント」のように、5分前のことも覚えておけない重篤な障害から、同じ話をまた繰り返すといった軽い障害まで、その程度は千差万別です。
この方の場合は、後者。
先ほど話されたこと、例えば、「今日、同室の人がこんな面白いことを教えてくれたよ」といったことを30分後にまた、初めて伝えるように話されることが時々あります。
かといって、コインランドリーを30分後に取りにいかないといけないことなんかは、まずまず、問題なく覚えておられます。
私たちも話したことを忘れてまた話してしまうということはありますが、この方のような短期記憶障害の場合は、また同じ話をするまでの時間が短いです。
私たちは他者と話をする際に、無意識的に相手の言動を観察し、言葉を選び、伝えたい内容を伝えます。
「話をすること」に無意識的に注意を払っているのです。
注意を払うことで、話をしたことは「短期記憶」に届いて、30分後でも覚えていることができます。
しかし、軽い短期記憶障害の場合は、この注意を払う機能が弱くなっているので、「短期記憶」に届かず、30分後には忘れていて、でも話したいという気持ちはそのまま維持されているので、結果的に同じ話をしてしまうということが起こります。
同じ話をすることは日常生活にさほど影響はありませんが、この軽い短期記憶障害で一番支障をきたすのは薬の飲み忘れ。
薬を飲まないといけないことは覚えているのだけども、飲んだのかどうか思い出せないということが多々あります。
その為に、小さなポケットがいくつもある薬入れに入れて、服薬の管理をしていただくようにお伝えしました。
病気からすれば短期記憶障害があります、で終わる話ですが、自分の今の状態はどういう状態で、なぜそうなるのか、理由をご説明すると、納得して、またやるべきことをご家族とともに理解していただきました。
ちょっとしたホッとした気持ちになっていただく、心のお掃除ですね。