2026.06.24 自分の性格特性や脳のクセを知るには 〜メタ認知を高めるための心理検査・認知機能検査〜
タグ:メタ認知, メンタルヘルス, 心理検査, 注意機能, 脳のメンテナンス, 脳科学, 自分・自己分析, 自己分析, 認知機能
先日の講演で2つの興味深いご質問を頂きました。
一つは
「メタ認知を高めるために自分の性格特性や脳の機能の特徴をどのようにしたら知ることができますか。」というご質問。
もう一つは女性のトップとして仕事をされていて、様々な女性社員さんからの相談事にも載っているという方からの
「心理的安全性に興味をもってもう少し知りたいと思います。」というご質問。
今日はまずそのうちの一つ目「性格特性と脳機能の傾向を知る方策について」のブログ記事を、
次のブログ記事では「心理的安全性」について書いていきたいと思います。
【1】「気をつける」だけでは防げないヒューマンエラー
先日の講演では、ヒューマンエラーを防ぐための一つの方策として、自分自身の心理的バイアスや注意機能の傾向を知り、メタ認知を高めることの重要性についてお話ししました。
その質疑応答で、メタ認知と関連して
「自分の性格特性や脳の機能の特徴は、どのようにすれば知ることができますか」
というご質問をいただきました。
これは非常に大切な問いです。
なぜなら、
ヒューマンエラー対策は「気をつける」だけでは不十分だからです。
自分がどのような場面で焦りやすいのか、
どのような判断バイアスを持ちやすいのか、
注意が散りやすいのか、
あるいは一つの作業に集中しすぎて周囲が見えにくくなるのか。
こうした自分の傾向を知ることが、安全行動の第一歩になります。
【2】心のクセを知る心理検査、脳のクセを知る認知機能検査
心理特性を知る方法としては、性格検査(=心理検査)があります。
代表的なものには、
◆外向性・協調性・誠実性・神経症傾向・開放性をみるビッグファイブ系の検査、
◆人格傾向や心理的特徴を多面的にみるMMPI、
◆情動の扱い方として再評価や感情表出の抑制傾向をみる**ERQ(Emotion Regulation Questionnaire)
などがあります。
ビッグファイブは人格特性を5因子で捉える代表的モデルであり、
MMPIは人格・精神病理の評価に広く用いられ、
ERQは感情調整方略の個人差を測る尺度として知られています。
一方、脳の機能、特に注意や情報処理の特徴を知る方法としては、神経心理学的検査や知能検査があります。
たとえば
◆WAIS-IVでは、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリ、処理速度などの認知プロフィールを見ることができます。
以前の知能検査では「言語性」「動作性」といった大きな枠で説明されることもありましたが、現在はより細かく
認知機能の得意・不得意を把握する形になっていて、
WAIS-IVは4つの認知領域を評価する検査として説明されています。
また、注意機能を見る検査としては、
◆数字や文字を順につないでいくTrail Making Test(TMT)があります。
これは視覚的探索、処理速度、注意の切り替え、実行機能などを見る検査です。
さらに、◆色名と文字の干渉を利用するストループテストは、
不要な反応を抑える力、つまり認知的抑制や注意制御を評価する検査として用いられます。
【3】検査はラベル貼りではなく、自分の“取扱説明書”を作るための道具
ただし、ここで大切なのは、これらの検査を「自分にラベルを貼るため」に使うのではないということです。
「私は注意力が低い」「私は感情コントロールが苦手」と決めつけるためではなく、
安全行動においては。ERQは自分がどのような状況でエラーを起こしやすいかを知り、対策を立てるために使うものです。
たとえば、処理速度がゆっくりな傾向がある人は、急かされる場面でミスが増えやすいかもしれません。
ワーキングメモリに負荷がかかりやすい人は、複数の指示を同時に受けたときに抜けが生じやすいかもしれません。
情動コントロールに課題がある人は、焦りや怒りが判断を狭めることがあります。
自分の傾向を知ることは、弱点探しではありません。
むしろ、自分を安全に使いこなすための取扱説明書を作ることに近いと思います。
心理検査や認知機能検査は、そのための有効な道具です。
自分の脳と心のクセを知り、メタ認知を高めること。
それは、個人の安全行動だけでなく、組織全体のヒューマンエラー対策にもつながっていきます。

