2026.06.25 幽体離脱や金縛りは科学で説明できるのか 〜脳がつくる「摩訶不思議な体験」について〜
講演後の会食の場で、少し不思議で、しかしとても興味深いご質問をいただきました。
それは、
「幽体離脱や金縛りのような摩訶不思議な現象は、科学的に説明できますか」
「大人が何も見えないところを子どもが何かいる、と言って怖がるような話をたまに聞くが科学的に説明できますか」
というものです。
結論から言えば、少なくとも
一部の現象については、脳科学的にかなり説明が可能になっています。
たとえば幽体離脱は、「魂が身体から抜け出す」という表現で語られることがあります。
しかし脳科学では、これは自分の身体をどこに感じるかという
「身体感覚」の統合が一時的に乱れた状態として考えられています。
視覚、平衡感覚、体性感覚などがうまく統合されないと、「自分が身体の外にいる」「上から自分を見ている」といった体験が生じることがあります。
実際、側頭頭頂接合部(頭の横側の少し上の方)という領域への電気刺激によって幽体離脱様の体験が誘発された報告もあります。
金縛りも同様です。
睡眠中、特にレム睡眠では、夢の中の動きを実際に行動に移さないように、身体の筋肉は一時的に動きにくい状態になります。
ところが、意識だけが先に目覚め、身体の脱力状態が残ると、「目は覚めているのに動けない」という金縛りが起こります。
このとき夢のイメージが混ざると、人影や気配、圧迫感(例えば、誰かが私の上にのっているとか)として感じられることもあります。
では、「大人には見えていないものを子どもが見えている」と感じられる現象はどうでしょうか。
これも、すべてを超常現象として扱う必要はありません。
子どもは想像力が豊かで、
現実と空想の境界が大人ほど固定されていない時期があります。
空想上の友だち、いわゆるイマジナリーフレンドは、多くの場合、発達の中で自然に見られる現象であり、
社会性や想像力の発達にも関わるとされています。
また、子どもの幻覚様体験についても、研究では
「健康な発達の範囲から、支援を要する状態まで連続的に存在する」と考えられています。
つまり、子どもが何かを見た、聞いたと話したからといって、すぐに病的と決めつける必要はありません。
ただし、それが強い恐怖を伴う、長く続く、生活に支障をきたす、命令されるような内容である場合には、専門家に相談することが大切です。
このように、幽体離脱、金縛り、子どもの不思議な知覚体験の多くは、
脳の働きや発達、睡眠状態、感覚統合の仕組みから説明できる部分があります。
ただし、私はここで「すべてを科学で割り切ればよい」と言いたいわけではありません。
科学は、不思議な現象の背景にある仕組みを照らしてくれます。
しかし一方で、人が感じる「不思議だな」「何だったのだろう」という
余韻まで、すべて解体してしまう必要もないのかもしれません。
脳の仕組みを知ることで、怖さは少し和らぎます。
けれど、世界にはまだ、
少し摩訶不思議なまま置いておくからこそ味わえる情緒もあります。
科学で理解し、情緒で味わう。
そんな距離感が、人間らしい不思議との付き合い方なのかもしれません。

