2026.04.28 ネガティブ感情は本当に悪いものなのか 〜ストレス耐性との関係から考える〜
タグ:ストレス, ストレス解消の工夫, 心理検査, 脳のメンテナンス, 自己分析

先日の安全大会での講演では、ヒューマンエラーと脳の関係についてお話ししました。
その中で、
「ストレスによって生じるネガティブ感情は、脳の情報処理経路を乱し、注意力や判断力を低下させる方向に働き、その結果、見落としや思い込み、判断ミスなどのヒューマンエラーにつながりやすくなる」
という点を説明しました。
また、その一方で、
「ポジティブ感情は脳の情報処理を活性化させ、注意の広がりや認知の柔軟性を高める原動力となり、結果的にヒューマンエラーを防ぐ方向に働く可能性がある。」
という点もお話ししました。
そのお話に対して、質疑応答では大変興味深いご質問をいただきました。
一つは、
「ネガティブ感情もプラスに働くことはないのか」
というご質問。
もう一つは、
「組織にはネガティブ感情を持つ人も必要ではないか」
というご質問でした。
今回はまず、一つ目の「ネガティブ感情もプラスに働くことはないのか」について考えてみたいと思います。
《ネガティブ感情が原動力になる場合》
質疑応答の場で私は、ストレス耐性の観点からお答えしました。
ストレス耐性が高い人であれば、ネガティブ感情を持ったとしても、それに押しつぶされるのではなく、「跳ね返そう」とする意志が生まれ、行動の原動力になる可能性があるということです。
たとえば、不安を感じたときに「失敗したらどうしよう」と萎縮してしまう人もいます。
一方で、「だからこそ準備をしよう」「確認を増やそう」「同じミスを繰り返さないようにしよう」と行動に変えられる人もいます。
この違いを生む要素の一つが、ストレス耐性です。
《ストレス耐性とは何か》
ストレス耐性とは、ストレスを受けたときに、それをどのように受け止め、処理し、回復していくかという心身の力です。
ストレス耐性が低い状態では、ネガティブ感情は注意を狭め、思考を硬直させます。
その結果、冷静な判断ができなくなったり、周囲の情報に気づきにくくなったりします。
しかし、ストレス耐性が高い人では、ネガティブ感情が単なる負荷ではなく、危険を察知するサインや行動を促すエネルギーとして働くことがあります。
大切なのは「感情そのもの」ではなく「扱い方」
ここで重要なのは、ネガティブ感情そのものが良い、悪いという単純な話ではないという点です。
同じ不安でも、扱い方によって結果は変わります。
不安に飲み込まれれば、ヒューマンエラーの要因になります。
しかし、不安を「準備不足を知らせる信号」として受け止めることができれば、確認行動や改善行動につながります。
つまり、ネガティブ感情がプラスに働くかどうかは、その感情をどう解釈し、どう行動に変換できるかに左右されます。
《ヒューマンエラー対策としての感情理解》
安全の現場では、「不安を感じること」そのものを否定する必要はありません。
むしろ、不安や違和感を感じ取れることは、危険予知の入り口にもなります。
ただし、それを冷静に扱う力が必要です。
そのためには、日頃から自分のストレス反応を知り、感情に気づき、必要に応じて休息や相談、確認行動につなげることが大切です。
ネガティブ感情は、脳の情報処理を乱すリスクを持つ一方で、ストレス耐性が高く、適切に扱える人にとっては、行動を促す力にもなります。
次回は、二つ目のご質問である
「組織にはネガティブ感情を持つ人も必要ではないか」
について、組織の多様性や安全文化の観点から考えていきたいと思います。

