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2025.03.03 ストレス耐性が低い人のストレス耐性を高めるには?~講演「脳科学から知るヒューマンエラーとその対策」Q&Aより~

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先日開催した
「脳科学から知るヒューマンエラーとその対策 ~ヒューマンエラーを脳から理解する~」
という講演では、
m-SHELモデルをもとにヒューマンエラーの構造的理解と、
その原因を m(management), S(Software), H(Hardware), L(Liveware=人間関係), E(Environment=環境) に切り分けて考えることの重要性をお伝えしました。

そして、「外側のストレスをいくら減らそうとしても、すべてをゼロにはできず、
最終的には「個人(Liveware=自分自身)」にもストレスが及んでしまう。
だからこそ、それに負けないための
「個人としての壁(バリア)」を作ることが重要だとお伝えしました。

講演後の質疑応答でいただきました質問の1つ、
「ストレス耐性が低い人がどうやってストレスへの耐性を高めればいいのか?」は、
多くの方が抱える疑問だと思います。
そこで、今回はこのテーマを深掘りしてお話ししたいと思います。

ストレス耐性を強くする_コギトラボ

【1】ストレス耐性とは何か
「ストレス耐性が高い」とは、ストレス要因に対して心身が大きく揺さぶられにくく、かつ揺さぶられたとしても回復が早い状態を指します。
生まれつきや性格の要素もありますが、適切なケアやトレーニングによって高めることが可能です。
ストレス耐性に関連する要素は次の3つです。

ストレス要因:人間関係のトラブル、業務量・業務難度、環境変化など
ストレス反応:イライラ、疲労感、意欲の低下、不安感など
ストレス耐性:ストレス要因を受けても対応可能な心身の力(回復力や折れにくさ)

【2】ストレス耐性を高めるための基本的な考え方
ストレス耐性を高めるうえで重要なポイントは、
「身体的側面」と「心理的側面」の両面からのアプローチです。
また、ヒューマンエラーの要因分析でお話ししたように、
「知識・技能・応用力」も身に付けると、自信や余裕が生まれ、ストレスへの抵抗力が上がります。

1. 身体的健康管理

➀十分な睡眠
休息:脳と身体をしっかり休めることで、
ストレスホルモン(コルチゾールなど)の分泌が正常化します。

➁適度な運動
ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は脳内の
神経伝達物質(セロトニンやエンドルフィンなど)を分泌し、ストレスを緩和します。

➂栄養バランスの良い食事
タンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く摂取することで、身体だけでなく
メンタルも安定しやすくなります。

2. 心理的健康管理

➀メンタルトレーニング
マインドフルネスや深呼吸法など、意識的に「今ここ」に集中する習慣をつくると、過度な不安や緊張をやわらげます。

➁セルフモニタリング
日記やアプリなどを活用して、自分のストレス状態を客観的に把握します。
ストレスサインにいち早く気づき対処することで、深刻化を防ぎます。

➂サポートの活用
家族や友人、同僚など、気軽に話せる相手や専門家(カウンセラーなど)を見つけて相談することも大切です。
自分ひとりで抱え込まない環境づくりが、ストレス対策の鍵になります。

3. 知識・技能・応用力の習得

➀知識を増やす
自分が関わる業務やプロジェクト、または対人関係に関する知識を深める。
未知のものが多いほど不安が増すため、
知識を得ることで自信がつき、ストレスが軽減されます。

➁技能を磨く
業務のやり方や道具の使い方、人とのコミュニケーションスキルなどを訓練して習得する。
習熟度が上がればミスやトラブルが減り、ストレスも下がります。

➂応用力を高める
状況に合わせて対応方法を柔軟に変える練習をする。
シミュレーションや現場での実践を通じて
「こう来たらこう返す」という引き出しを増やすと、
想定外の出来事にも落ち着いて対処できるようになります。

【3】実践的なステップ
ステップ1:ストレスの原因を可視化する
日常の中でストレスを感じた場面と、
その理由、対処方法をノートやアプリに書き留めます。

➁「なぜ自分はそこで強いストレスを感じたのか?」を言語化するだけでも、自分の傾向が見えてきます。

ステップ2:対処法を組み合わせて試す
➀身体面:
軽い運動、早めの就寝、食習慣の見直しなど、一度に全部ではなく少しずつ導入します。

➁心理面:
マインドフルネスの導入、誰かと話す習慣づくり、気分転換になる趣味の時間を確保するなどを試します。

ステップ3:小さな成功体験を積む
「ストレス要因が起きたけれど、今回は少しうまく対応できた」など、
小さな変化に気づいたら自分を褒めてあげましょう。
自己肯定感が高まると、次の行動へのモチベーションも上がります。

ステップ4:習慣化・継続
➀ストレス耐性は、一時的に高めても継続しないとあまり意味がありません。
➁気づいたらできるだけ早く対応し、定期的に振り返って調整する「セルフケアの習慣化」が大切です。

【4】“心の筋トレ”としての捉え方
筋肉と同じように、ストレス耐性も
「刺激 → 休息 → 回復 → 成長」というサイクルで少しずつ鍛えられていきます。
最初から無理をすると、筋トレで体を壊してしまうのと同じように、心も疲弊してしまいます。
適度な負荷→しっかり休息→翌日に少し成長している自分を実感、というプロセスで回復力を身につけることが大切です。

【最後に】
ストレス耐性は決して「先天的なものだけ」で決まるわけではありません。
身体的・心理的健康管理と、知識・技能・応用力を高めて自信や余裕をつくることで、
ストレスを感じにくくなる・感じても短時間でリカバリーできるようになるのです。

おさらいでまとめておきますね。

身体健康管理:睡眠・運動・食事
精神健康管理:メンタルトレーニング・セルフモニタリング・サポートの活用
力量アップ:知識・技能・応用力の習得

ストレスは、まったく無い状態にすることは難しいかもしれません。
しかし、適度なストレスは成長の糧にもなり得ます。
自分を追い詰めない範囲で、新しいチャレンジを楽しみながら、少しずつストレス耐性を鍛えていきましょう。
ストレス耐性向上には時間がかかりますが、一歩ずつでも取り組んでいけば着実に変化は感じられます。
もし一人では難しいと感じたら、信頼できる人や専門家に相談し、サポートを得ながら進めるのがおすすめです。
皆さんのストレスマネジメントがうまくいき、心と体の健康が保たれることを願っています。

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