2020.03.18 住環境が変わった時に高齢者の方におこりやすいメンタル的リスクと認知症のリスク
タグ:メンタルヘルス, 介護のヒント, 介護の工夫, 神経心理カウンセリング, 認知機能, 認知症
ある高齢の女性が、脳出血の後、リハビリ病院退院後、もう少し伸び代を試したいということで、某老人施設に6ヶ月程度を目処に、入所されました。
リハビリ病院へ家族が面会に行った時は、さみしいから帰りたいと、涙ぐまれるほどだったのに
施設に移られてからは、人が変わったようになり、面会に行っても五分ほどしたら「もう帰ってくれ」とおっしゃると。
「老人施設に移ってから、
どこかおかしくなったのではないか心配で、
何が起こっているのか、
可能性の説明と考えられる対処について
アドバイスが欲しい」
というご相談でした。
可能性としては二つ。
一つは、認知症が進んだ可能性
もともと脳出血の後遺症で、軽度から中程度の認知症の傾向があったので、それが進んで、状況認識する認知能力が弱くなったのではないかということ。
高齢者の方の場合は、
環境が変わると認知症が進むことが
少なからずあります。
もう一つは、家族も含めた周りの人との言葉の齟齬や新しい施設のスタッフとの関わりの気苦労などが重なり合って、
現状を悲観的に誤解して、
諦めやともすると絶望に近い
気分の落ち込み状態(うつ状態)
になっている可能性
さらにタイミング悪く、コロナウィルスの影響で、面会に制限がかかっていることも拍車をかけたようで、
面会の回数も限られ、家族とも十分に話せない、
新しい施設のスタッフとの関係性も測り切れていない、
自分の体に対しても不安は募るばかり。
運動能力の麻痺や加齢による衰えなどで、
行動範囲が狭まると、
健常の人が推測する以上に、
その方が感じられている「世界」は狭いです。
決して八方塞がりでない状況であっても、
「もうダメなんだ、人生終わったんだ」と
悲観の極地に陥りやすい。
とりあえず、問題の所在を切り分けて確認するために、
「今一度、半年頑張って、リハビリをすれば帰れること」と、
「どうしても嫌ならいつでも帰れること」を
明確にお伝えするようにアドバイスしました。
さらにこの施設では携帯の持ち込みは許可されていたので、
高齢者用の携帯電話を持っていただいて、
定時に連絡を取り合うことも
アドバイスしました。
この
定時
というのがポイントで、
この時間になれば、家族から電話がかかってくる、たったこれだけのことでも、毎日の楽しみになり、期待になり励みになります。
もしも認知症の進行が原因ではなく、状況に対する悲観的な誤解から絶望に近い気持ちで、気力が落ちていたならば、このような働きかけで、原因となっている不安を放出されます。
この方の場合は、予測通り後者で、上記のようにお話ししてもらうと、堰を切ったように、帰りたい、ここは嫌だ、と大泣きされたと。
もうずっとここで居なければならないと思ったので、面会のたびに面会室への移動で施設のスタッフの方煩わせることを避けたく思い、スタッフの方に嫌われないよう、早く帰ってくれといったとのこと。
また、家族の方には覚えがないそうなのですが、「ここで頑張ってリハビリをしないと帰れない。」という声かけを過大にとって、頑張って「治る」自信がないので、もう帰れないんだと悲観的に思い込んだらしいこと。
その後は、施設の方にも状況をお話しして、気にかけていただき、携帯で朝夕の二回家族からの励ましの言葉を受けて、今は、それなりに頑張っておられるとのことで良かったです。
高齢者の場合、
環境が変わるとメンタルや
認知機能の低下の起こることが
少なからずある
ので、
注意が必要です。